Tommyの乱読のススメ

ノンジャンル読書と雑記の混沌としたブログです。

友だち幻想/菅野仁

 

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

 

最初の読書記録なのでライトなものをチョイス。

10年前の作品だが、最近になって話題に。話題の書ということで手に取ったが、内容は若年層向け。その分、平易でとっつきやすい。一時間もかからず読了。

 

現代社会の他者との関わり

人は良くも悪くも他者の二重性に振り回される。つまりは他者は脅威ともなれば、生の味わい(エロス)を満たすものともなりうる。

現代社会では、この脅威となる他者に対する恐れが顕著だ。

昔は生命維持の相互性を目的に、閉じられたムラ的な共同体を形成していたため、その中の価値観は同質的であった。ただ、今は利便性の向上がもたらすボーダレス化によって必ずしもムラに属さなくても生活が可能、つまり生命維持の相互性という重要性が薄れたため、共同体の在り方が様々な価値観を内合するものとなった。

ただ、あるべき姿はムラ的な同質性を前提にしており、結果、現代人の性格類型は同調圧力を求める他人指向性に類されることとなる。

 

ある種の開き直りが肝要

人間であれば、恨み、嫉妬などの負の感情(ルサンチマン)を抱くのは不可避。

これに囚われるのではなく、いかにやり過ごすか。敵味方の二者択一でなく態度保留という真ん中の道を選択することを見出すことが重要。

上手に関係を築くためには、場のルールとノリを把握した上で、人付き合いのルールを理解し、作法を身に付ける必要がある。こうすれば、必要以上に思い悩むことはなくなる。

自分のことを100パーセント受け入れてくれる人がいるというのは幻想。過度な期待はやめて人は異質な他者であるということを意識した上での信頼関係を築く必要がある。

 

対話を恐れるな

最近は異質な他者と向きあうことから自分を遠ざけるコミュニケーション阻害語が闊歩している。ウザい、チョーヤバイなど。

こうした言葉は物事 に対する感受性や判断力を奪う。情緒の深度を深めるには、筆者と対話できる読書が良い。

親しさや情緒を共にしながら生を深く味わうためには、人と人との距離感覚に敏感になることが肝要。現代人は他者への恐れの感覚や自己表現の恐れの感情が顕著だが、苦労してでも人とのぶつかり合いながら理解を深めていくことが、そのためには必要なことである。

 

 

敵か味方か、

そういう二項対立は、帰属による安心感を強める一方、いつか排除されるのかという不安感も生まれてしまい、人間関係がギスギスしたものになりがち。そういう単純な構図に押し込むのではなく、合うこともあれば合わないこともあるということを理解し、お互い傷つけ合わず共存する作法こそ現代に求められている。

 

みんな仲良くという理想主義者からすれば、本書の内容は開き直りと捉えられるものだろう。

ただ、従前の価値観が崩壊している現代、これまでの価値観を無批判に押し付けることは思考停止であろう。画一的な正解たろうとする綺麗事だけでなく、こうした「冷めた視点」(冷静な視点と言うべきか?)もあることを、中高生の段階で知っておくのは生きる知恵となるだろう。