Tommyの乱読のススメ

ノンジャンル読書と雑記の混沌としたブログです。

ポップな経済学/ルチアーノ・カノーヴァ

 

ポップな経済学

ポップな経済学

  • 作者: ルチアーノ・カノーヴァ
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2018/08/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 今、AI時代についての本が大量に出版されています。

正直、私はその潮流についていけないところがありますが、それでも食らいついていかなければ、この波に飲まれてしまうだろうと思います。

ということで、簡単に読めそうな本書を手に取りました。

テクノロジーがもたらすもの

現代は、労働市場の自動化が進行しており、近い将来、ホワイトカラーの仕事が激減するとされています。具体的には20年以内に半分に減るという、決して他人事にできないような深刻な度合いです。

そうした中で、仕事には創造性・独自性・社会性が求められていきます。

さて、ただテクノロジーイノベーションを悪とみなして見ないふりをすることは簡単だが、本書では、これが生み出しうる可能性に言及するというのが目的とのことです。

 

行動を形作る

行動経済学の書物として、行動を方向づけるテクノロジーについて述べられていました。その中で簡単に例があげられる二つをピックアップ。

ナッジ

我々の選択を禁止やインセンティブといった強い誘因を与えることなく設計するものをナッジというとのことで、これ利用することで、行動を特定方向に向けることが可能とします。

これは前段で紹介したテクノロジーに比べてアナログなものだと思いますが、まぁテクノロジーの一種として、、、。

例えば、男性用便器に的を描いておくと、みんながそれを狙うので、トイレが汚れずに済むなど、『仕掛学』ではデザインがもたらすナッジをいくつかあげているのでえ、参考書としてあげておきます。

仕掛学

仕掛学

 

 

ゲーミフィケーション

なんらかの施策にゲームならではのダイナミズムやメカニズムを取り入れる手法。

これを見た瞬間、いきなりステーキの「肉マイレージ」が思い浮かびました。ステータスの承認・競争(ランキング)、マイルストーン(一定の基準を達成すると賞品)などの要素があり、ただ「食べるだけ」でなく、その行為自体に付加価値が生まれると消費者に感じさせる。この側面が成功に繋がったのかなと思います。

 

ビッグデータも万能ではない

今、ビッグデータの発展が著しく、これまでアナログだった情報を定量化することに成功しています。

この考え自体は一昔前からあったものですが、実用に至ったのは、近年のIT革命によるものでしょう。

ただ、ここで重要なのは、ビッグデータがあるからといって、全てを解き明かすことができるわけではないということ。

データ分析の基礎中の基礎ですが、「相関関係は因果関係を表すものではない」。処理するにはITでも、それを材料にどう料理するかは、人間の力量が問われるところです。

米村穂信の古典部作品ではないですが、「データベースは結論を出さない」ということを念頭に置いておかないと、落とし穴にはまる可能性があります。

 

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

 

これからの世界でどう生きるか?

最後にIT化の進む社会でどう生きるかという点ですが、

エクスポネンシャルな世界では、変化から身を守るのではなく、変化を扱い、変化を生きようとすることが肝要と述べられています。

エクスポネンシャルというのは「指数関数的」という意味。エクスポネンシャルな世界というのは、「少し前の常識が通用しない急激な変化のある世界」と意訳するのがいいでしょうか。

変化に対して棹差すのではなく、これを取り入れていく姿勢が重要です。テクノロジーが拡大するならば、人々が豊かになるはず、、、筆者が最後にこう述べていることから、テクノロジーの発展がディストピアを生み出すばかりではないはずです。

 

ととりとめのない形で述べていきましたが、本書は中盤の展開が、ただの情報の羅列にとどまっており、主張が拡散しているように感じました。

そのため、結局何が言いたいのかがよく分からず、私としては期待した内容を得るという観点では不完全燃焼に終わった気がします。

辛口ですが、あまり人には勧められない本です。