Tommyの乱読のススメ

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さよなら妖精/米澤穂信

 

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)

 

 『王とサーカス』が平積みされていたので、手に取ろうと思いましたが、シリーズもので、こちらが先出ということなので、まずは本書から攻めようと思い手に取りました。

私の好物のミステリーということで、前回のレビューに倣って書評をば。

 

 

謎(トリック、伏線、独自性)  ★2

北村薫の『空飛ぶ馬』の系列の「日常の謎」もののミステリー。要は人が死にません。

米澤穂信といえば、「古典部」シリーズが代表作であり、この系統はお得意なものかと思います。作中に散りばめられたちょっとした謎。そして終盤の、ある人物を巡る国を跨る謎解き。

やや冗長に思えるストーリーは、最後の謎のための伏線。ヒントは示されているとはいえ、真相に迫るのは前提知識がないと難しいかと。そういう意味では、謎解きはこの小説の本筋ではないかと思います。

あとでも述べますが、本作はミステリーではなく、ジュブナイル小説として読んだ方が、期待度を落とさずに読み進めることができるかと思います。

 

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

 

 

人物描写(キャラクターの魅力、共感)★3

少々人物の掘り下げが甘いように感じました。主要な登場人物が5人しかいないので、もう少し個々を描写することができたのではないかなぁと。

ただ、マーヤが日本文化に対して抱く羨望の気持ちなどは細かく表現できていたように思いました。なので、次回作に登場する太刀洗万智についてはもう少し心情が表れるような気の利いた描写も欲しかったなぁと思いました。

 

文章表現力★2

実は、米澤穂信の文章はちょっと肌に合わないところがあります。

彼の作品は、『インシテミル』や『満願』、「古典部」シリーズを少々読んだだけなのですが、会話文で誰が喋っているのか分からなくなったり、やたらと描写が軽かったりと、ちょっと内容に入り込めないことがあったりします。

本作は、マーヤの会話がアクセントになってメリハリはついているものの、他の人の会話は太刀洗以外は没個性的な印象を受けました。

 

プロット(ストーリーライン)★3

繰り返しになりますが、本作はミステリーとしてではなく、ジュブナイル小説として読むと、非常にスッキリとします。大体、ミステリーを読む人間はややひねくれた読み方をするので(私見です。叙述トリックを見破ろうとしたり、あらを探すように読みますよね?)、斜めに構えてしまいますが、青春小説として素直に捉えようとすると、ほろ苦さなどが感じ取れて、情緒ある作品に変わります。

という青春小説としての味を評価しましたが、ミステリー色は薄いのでこの評価に。

 

ということで、ミステリーとしては少し期待はずれだったかなぁと感じた本作、ただ、『王とサーカス』が話題のようなので、そちらに期待か。

 

王とサーカス (創元推理文庫)

王とサーカス (創元推理文庫)