iPadに入ったまま、読まずにいた本書を今になってようやく読了。
ミステリー続きになりますが、レビュー再び!ややネタバレありです。
この著者は、発表当時大学生だったとのこと。若い才能ですね…。
謎(トリック、伏線、独自性) ★2
何を解き明かさなければいけないかが単純明快なため、読み進めながら考えを巡らせていきやすいというのは高評価。
ただ、肝心要のトリックは些か無理あり。いや、現実的にはできるものなのだが、あまりにも偶然に頼りすぎているように感じ、その状況で殺人を起こす必然性がないと思わざるを得なかったです。
人物描写(キャラクターの魅力、共感)★3
ラノベや少年漫画のような人物たちが登場するので、好みは分かれると思いますが、私は「金田一君」で育った年代なので親近感が湧きました。有能な主人公、抜けている警察ナドナドどこかで見たことがあるような人物関係。好物です。なので、この評点はちょっと甘めかもしれません。
ただ、「真」の動機に関する部分は、「そんなに人の心や行動を上手く操作できるのか?」と無理があるように感じたため、共感という観点ではマイナスに。
文章表現力★3
読ませるという点では上手いと思いました。死体の描写などは特筆するものはありませんでしたが、会話はテンポが良かったです。
あとは筆力で「魅せる」というところが欲しい。ただ、今後の筆力向上の余地ありと思うので期待。
プロット (ストーリーライン)★3
理詰めで真相に迫っていくエラリー・クイーンよろしくな構成。勿論、粗はあるように見えますが、勢いで読ませる感じですね。娯楽小説としては及第点だと思います。展開は王道なので捻くれ者なミステリー読者にとっては物足りなさを感じるかも。
ということで、たまたま手元にあったという邪な理由で読んだのですが、今後に期待できる作品でした。
ミステリーは結構な数を読んでいるため、どうしても辛口な評価になってしまうのですが、本作はテンポの良さが光り、ストレスなく読めるというところが高評価でした。
おどろおどろしい横溝ミステリーが一時代を築きましたが、これからの時代はこういったライトな文体が読者を引きつけるかもしれません。