- 作者: エドワード・スノーデン,国谷裕子,井桁大介,出口かおり,(公社)自由人権協会,ジョセフ・ケナタッチ,スティーブン・シャピロ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2018/08/17
- メディア: 新書
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テレビでスノーデンの逃亡・渡航に関する番組を観て、ちょっと気になっていたので 何か簡単な本はないかなぁと思ったら書店で目につきました。自分の住む日本をテーマにしており、自分のフィールドに引き込めると思ったので手に取りました。
日本における大量監視の実態
2017年アメリカ政府が日本政府にXKEYSCOREという新しい監視技術を秘密裏に提供していたことがリークされました。
ただ、日本政府はこの事実を認めておらず、スノーデン氏はこの態度を遺憾なものと断じています。
残念ながらマスコミは政府の無言の圧力によりこれを報じていない現状にあり、スノーデン氏はこれも憂慮、メディアは一体となり影響力を行使して抑止力たれと主張しています。
監視の正当化として、政府は「目的は一般の人を監視することでもプライバシーと戦うことでもない。テロと戦い、安全な社会を維持することが目的」言います。
スノーデン氏は目的はそのとおりだが、手段が人権を侵害していると問題視します。
政府はごく自然に抱く恐怖心を悪用してこうした施策を押し通そうとします。
こうした中、市民はどのように対応すれば良いでしうか。スノーデン氏は
①NGOを支援し、安全装置として機能させ、政府に説明責任を果たさせる
②自衛のために暗号化などの技術による解決を目指す
という手段を挙げています。
アメリカにおける監視との戦い
市民の中にある問題意識は「安全と引き換えに自由を犠牲にすべきか」ということ。
これは市民みんなで議論することが肝要。
ACLU(アメリカ自由人権協会)は監視社会の最先端であるアメリカにおいて監視の問題と戦ってきました。
その中で得た問題意識は、監視は行われていることは気づくのは難しいということ。
また、昔はターゲットを特定する監視であったが、今は特定しない監視となり、扱われる情報量が膨大になったという性質に変化にも着目しています。
2013年のスノーデン氏のリーク以降、監視に対する議論は活発化(別の論者からスノーデン以前からも問題意識はあったことが指摘されているが)したが、市民が問題意識を持たないと活動の火は消えてしまうということも述べられています。
日本の監視
警察の捜査には任意捜査と強制捜査(令状なし)の2種類があるが、テクノロジーの利用により、旧来強制捜査にあたるようなものが任意調査として実行される事例も出てきています。
日本における監視は人員も多い警察組織が実態を担っているのですが、その組織内部への監査体制は不十分であるという問題をはらんでいます。
プライバシー
プライバシーの権利は「自由に人格を発達させる権利」の支柱で、情報にアクセスする権利情報発信の権利(表現の自由)に並ぶものとされます。
そうした権利を侵害しないために、監視は①目的が適切、②内容が法に規定、③法によって保護措置や救済措置があることが必要とされます。
監視システムに対する保護措置については、具体的には、法令、独立機関の承認、監視手法の限定、監視の具体的要件(どういった条件で監視が許されるのか)、透明性・情報公開といった要素が挙げられます。
デジタル時代の監視とプライバシー
現代、安全保障を理由に大量監視が法制化され正当化されている状況にあります。
この悪用として、アメリカ法においてアメリカ国外に住む外国人のプライバシーは保障されないという暴論がまかり通っています。
これはアメリカに情報インフラが偏在しており、アメリカが世界のインターネット情報を掌握できるために実現できてしまっているのですが、これは国際法の趣旨に反するとして論争を巻き起こしています。
アメリカの例も関係しますが、「可能であれば実施する」ということには技術力の傲慢であり、対応のためには、スノーデン氏も挙げている、暗号化技術や法整備が必要不可欠として本書の議論は締めくくられています。
全ての情報は掌握されているってジョージ・オーウェルの『1984年』の世界ですかって恐ろしくなりますね。密告の恐れが少ないだけマシかもしれませんが。
「技術力の傲慢」と書かれていますが、技術自体は悪いものではなく、使う人の問題といった方が正しい気がします。技術に問題を当てるにではなく、悪意ある主体の濫用をどう止めるかというところに問題を当てるべきかなと思います。
解決策として、暗号化技術が挙げられていますが、なんとなくこれはさらなる新しい技術で乗り越えられてしまうような気がし、技術革新のイタチごっこになるだけかなぁと思っています。どちらかといえば、法整備の方が重要と思います。
勿論、安全との兼ね合いも大事です。本書はそこには最低限しか立ち入っていないので、ここでの議論は避けます。市民の中で対話を続けるべきという一般論だけを書いておきます。
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: ペーパーバック
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