先月から始めた本ブログですが、無事に10月を迎えることができました。
読者の方々に訪問していただいていること、感謝申し上げます。
今月もマイペースに読書をしていきます。
今日は日本史✖︎経済学をまとめて学べそうな本書です。
貨幣
日本においては、鎌倉・室町時代に貨幣の一般受容性(交換手段として受け入れられること)が成立し、江戸時代には決済完了性が成り立ち遠隔地での決済が可能になりました。
この2種を成立させる貨幣の種類を兌換貨幣と不換貨幣と言いますが、かつては金本位制により、貨幣の価値が裏打ちされていた。国際競争社会において、金本位制は為替相場の安定推移と競争力格差縮小が見込まれたが、為替相場介入(不胎化介入)によって競争力格差縮小が改善されないことがわかり、各国が脱退していきました。
今日の仮想通貨はマイニングの限界費用が価値の裏打ちをしていることから、金本位制に似ている(金本位制でも金の製造コストが価値を裏打ちしていたので)。そのため、過去の教訓を活かせるかということが焦点となりえます。
インセンティブ
人と組織を動かすのはインセンティブであるが、動いてもらう側に相応のモチベーションがなければ上手くいきません。
そのためには、コミットメント形成や情報の非対称性があるなかでの正しい評価などを整えて、モチベーションを引き出すことが必要になります。そうでなければ、制度の不充分性により国司の暴走を引き起こし衰退した律令制のような将来が待っています。
取引コスト
江戸幕府八代将軍吉宗の前は、非効率により組織のパフォーマンスが落ちていました。その理由としては、限定合理性、コミットメントや意思疎通の欠如が挙げられます。
その改善のために、吉宗は手順書や記録の徹底による業務の平準化、従来然とした人材登用の見直しなどを図りました。
ここで重要なのは、組織改革として人員削減や給与カットなどを行わなかったことです。真っ先に思いつきそうな人件費削減を行わなかったことは現代においても興味深いと思います。
(享保の改革には様々な評価がありますが、本論ではないので割愛します。私は高校の時にはあまり評価できないと習いました、その教師は田沼推しでした)
プラットフォーム
鎌倉・室町時代に成立した、いわば商人組合である「座」。彼らは寺社などの後光の元に商売をしていました。
その後、信長が「楽市楽座」として商人たちに旧来の慣習から解放されたプラットフォームを提供しました。信長は商業活性化のために、商人たちがそこで商売するインセンティブを作り出すために、安全・安心のエンフォースメントを作り出すことに腐心します。
ここに現代に通じる点がありそうです。今、フリマアプリサイトやSNSなど、繋がりやすくなる反面、その利用に関して不安を煽るニュースなどを目にします。利便性に目が行きがちですが、安心して利用できるという価値も、それに並んで重要視される要素かと思います。
本書内の株式会社・銀行危機・教育に関する部分は思い切ってカットしました。理由は、歴史の振り返りが中心だと思い、他の章よりも現代に繋がる見方が少ないかなぁと思ったからです(勿論、重要な観点であることは言うまでもないです)。
歴史って聞くと、どうしても「過去の出来事をどれだけ知っているか」ということに価値を重く置かれそうですが、私としては、
①現代に通じる教訓を見出す
②記録を通じて新たな歴史解釈を見出す
の2点が重要かと思います。そういう視点で本書はきっかけにはいいかと思います。
ただ、経済学の視点で言えば、あまり得るものは多くなく、少し物足りないかもしれません。