Tommyの乱読のススメ

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【誠実で勤勉な国民性】日本国紀/百田直樹

こんばんは~。

 

今日は久々の歴史ものです。

日本史の知識が薄れてきているので、備忘の意味で読書。

あ、一応自然科学系も併読してるんですよ。でも私の理解不足でイマイチ進んでいないのが現状です。

いずれレビューします。

 

日本国紀

日本国紀

 

 

色々と物議のある著者ですが、本書は通史ということもあり主張はおとなしめ?

なお、本レビューでは各時代の論証は省略し、印象を受けたエッセンスを取り上げます。


まとめると…

  • 日本人の誠実さと勤勉さは誇るべきもの
  • ただ、誠実すぎるところと肝心なところで現実逃避してしまうのが玉に瑕
  • 「俺が悪い」とついつい言ってしまう日本人。もっと批判的になりましょう

 

 

国としての日本

筆者は、日本人は元来、自国の自立性を重視し、外国に対して毅然としてふるまい、

それが認められていたと評しています。

日本という国号や天皇という言葉は、中国(と中国皇帝)に対し、対等さを主張するために用いられました。

結果、中国の周辺国では日本だけが柵封体制から外れた存在となっていました。

また、遣唐使の廃止も、中国文化から離れ、独自の文化を花開かせようという自信の表れとも読み取れます。

歴史は移り、明治維新後、急激なスピードで発展する日本に対し、

列強は畏怖を感じており、その評価は時代が移っても変わらぬものと言えます。

 

日本人のメンタリティ

筆者は日本人の誠実さと勤勉さについて称賛に値するとしてします。

 

日本人は争いの中で大虐殺をせず、戦乱に民衆を巻き込まない。

悲惨な戦争を繰り返した欧米列強の歴史とは大きく異なるものと評されています。

 

戦国時代に日本にやってきた宣教師たちも、

日本人を「善良で、親しみやすく、名誉を重んじ、盗みを憎む」と評しています。

江戸時代には街道が整備されましたが、治安も女性が一人旅できるほど良かったようです。

教養レベルも高く、庶民の多くが読み書きができ、江戸時代には鎖国中にも関わらず、

ケインズのマクロ経済学の理論を240年先取りした萩原重秀、

算術界の伝説:関孝和など、そのレベルの高さは傑出したものがありました。

(ただし、鎖国により、科学技術などの分野で国際社会に後れを取り、

 また国際感覚を身につけることができなかったことは無視はできません)

 

ただし、日本人の教養の高さや勤勉さは、のちの明治維新で発揮され、

鎖国から数十年で、列強の国力と肩を並べるほどになります。

明治時代は偉人たちが多く取り上げられますが、

これらを実現したのは多くの庶民であることは忘れてはいけない事実です。

 

ただし、誠実さは美徳とすべきですが、外交面ではいいようにやられてしまっている面があります。

大正時代の中華民国政府に対する「二十一ヶ条要求」では、二枚舌外交にしてやられてしまいますし、のちの外交でも同じような目にあいます。

この根底には、外交は騙しあいの一種であるということが、日本人の美徳と相いれなかったことにありそうです。

 

重要な局面を忌避する日本人

日本人は、最悪の局面を見て見ぬふりをするという傾向にあるようです。

その背景として、平安時代、貴族たちは戦や死を穢れとして忌み嫌っており、その手の仕事は武士に一任していました。

これが、争いを避けられない戦乱の世で貴族たちが没落する要因となるわけですが、

このようなオカルトを信じるメンタリティは、のちの時代にも「言霊主義」として受け継がれます。

言葉には魂がこもっており、「悪い結果は言葉にすれば成就してしまう」とする一種の信仰で、

江戸時代、黒船来航前に開国要求を迫る列強を見て見ぬふりをする幕府、

第二次世界大戦時に敗戦濃厚な事態にも誰もがそれを言い出せなかった空気、

といった歴史の大局面にもその姿勢が表れています。

 

批判的になること

常に批判的になり欺瞞を暴くことが、これからの時代に一層求められるものとなります。

筆者は、日露戦争の結果、賠償金を獲得できなかった政府に対し、

民衆が暴徒と化した「日比谷焼き討ち事件」が、メディアが世論を扇動した走りと位置付けています。

以降もメディアによって作られた言説が、国内外を扇動する事態が少なからず起きています。

日本人には自らの非を認めるのはやぶさかでないとする性格があり、そこに付け込まれることがあります。

それも一つの美徳なのかもしれませんが、賢しさが蔓延る国際社会、

自身を認め、自信を持ち、批判的に出ることが必要になります。

 

感想

日本人の民族性を根底に置き、歴史を振り返るといった内容でしょうか。

 

ざっと日本史の流れを知っておいた方がいいと思いますので、

初学者は「〇時間でわかる日本史」みたいな本を読んでからこの本に入るのがいいと思います。

私のような復習を兼ねて読みたいという人にはもってこいな本ですね。

 

通史をなぞることに主眼を置いていますので、筆者の色はさほど出ていません。

(ただ、出てるっちゃ出てるので、他の歴史観も併読することがマストでしょう)

あっと驚くような視点が欲しい場合は、『逆説の日本史』などを読むといいのかなぁと思います。

 (関連記事貼っておきます。言霊信仰についても触れています)

 

読んでいて一つ面白いと思ったのは、

「明治維新後に内政にも課題を抱えていながらも、外交面でも精力的に行動、

全ての政策と法律が即断即決でなされ、決断力と実行力で果敢に対処していった」点で、

これって(ステレオタイプ的で恐縮ですが、)現代の日本人と逆じゃない?

と感じさせます。

日本人のメンタリティはどこで変わってしまったのでしょうか?

筆者は「GHQ占領後」と即答すると思いますが、これは色々と考えられそうです。

さておき、明治時代と現代は置かれている文脈は違いますが、

諸先輩方が持っていた気概、後輩である我々も持っていても不思議ではないのかと思います。

 

書きたいことはいっぱいあるのですが、最後に2点。

本書はマスメディアの偏向報道を問題視していますが、受け取る側の姿勢が最重要です。

表現する主体は、特定の立場をとることを宿命づけられており、完全な中立をとるのは不可能です。

よって、受け取る側が数々のメディアの情報を消化し、妥当な見解を見出さなければいけません。

右派・左派の発言も同じで、両者の見解を解釈した上で、自分の論説を組み立てることが必要。

何が言いたいかというと、発信する側の欺瞞は暴かなければいけませんが、それに加え

「情報ソースが一つだけだと、それが偏向報道だと自分が操作されちゃいますよ」

ということで、複数の情報ソースを批判的にみることが重要です。

 日経だってNHKだって寄ってたりしますので。

 

最後の1点は、上の内容にかかってくるのですが、

本書の問題点として、参考文献リストがないこと(最近こういう本多いよなぁ)。

 

ということで、本書の内容も無批判に受け止めず、自分の中で批評するのが大事です。

(イチ情報に扇動されるなというメッセージを本書が自分で体現している?)

 

紙面の関係上、また真面目一徹で終わってしまった…。

 

 

本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

ではまた明日~。