Tommyの乱読のススメ

ノンジャンル読書と雑記の混沌としたブログです。

【我が国は絶賛セール中】日本が売られる/堤未果

こんばんは~。

 

今日はダウンしておりました。

最近、子どもが不調で、自分はその後に罹患…感染ったかなぁ。

 

さて、本日はこの本。

体調的にヘビーな本は読めないなと思いライトな新書を手に取りましたが、

めっちゃ内容がヘビーでした…。

日本が売られる (幻冬舎新書)

日本が売られる (幻冬舎新書)

 

 

 

まとめると…

  • 日本人の危機は見えないところで起きている
  • 短絡的な方策や聞こえのいい言葉が、日本人の「いま」と「未来」を奪う
  • 「消費者」でなく、社会に責任をもって関わる「市民」であることが重要

 

 

気づいたら危機にある日本人の資産

日本人の資産は、視野の狭い短絡的な方策により、喪失の危機に瀕しています。

現在、日本では水道事業の民営化が進められていますが、国際的には、

この独占市場に営利企業が参入し、独占企業に暴利をむさぼられ、水道料金の暴騰を引き起こしました。

そうした懸念から、国際的には公営化に戻りつつあるのですが、日本はそれに逆行します。

また、食の安全確保を目的にした種子法も気づかぬうちに廃止になり、

グローバル企業に食の主権を奪われ、遺伝子組み換え作物の侵入を許すことになります。

これは特定の農薬を使わなければ育たない性質があり、

作物を一度使ってしまえば、未来永劫このセット販売に依存してしまう性質があり、

従来の日本が誇っていた食の多様性を脅かします(実際イランなどは苦しむ)。

 

あれですね、『スプリガン』の「不死密売」神酒(ソーマ)のビジネスモデルですね。

不老不死の薬は、不滅の身体を手に入れられるが、常に薬を服用しなければならず、

一回服用させてしまえば、薬の提供側は永久的な収益が見込めるっていうヤツ。

(誰がわかるんだ、この例え…でも名作です) 

スプリガン〔保存版〕(6) (少年サンデーBOOKS)

スプリガン〔保存版〕(6) (少年サンデーBOOKS)

 

 

林業・漁業といった自然と親和性の高い分野も投資商品となり、

目先の営利を追求する企業活動が持続的であるべき生態系を破壊しつつあります。

 

日本人の未来が奪われる

未来を作るはずの仕事や、老後の安心も目先の利益しか見ない思考に毒されつつあります。

労働時間の規制が事実上なくなる「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」は、

高所得者(年収1,075万円以上)だけの問題と思われがちですが、この金額は明文化されたものではなく、

厚労省が恣意的に決められるものです(10円とかも可)。

なお、高プロの対象となる職種、労働時間は現時点で決まっておらず、

法案成立後に議論されることになっています(法案成立後にいくらでも操作可能)。

(本書出版現在)

 

また、介護分野に至っても、老後の安心でなく、

「人件費削減」、「サービス縮小」、「回転率アップ(!)」という文脈で

投資すべき目先のおいしいビジネスと語られています。

介護分野では減少する日本人労働者は外国人労働者で補えば?という議論もありますが、

実は外国人労働者にとっても、労働環境の劣悪さは知れ渡っており、

いまや募集人数が集まらない事態も起きています。

「日本はユートピア」という幻想を抱いているのは、他でもない日本人為政者だけかもしれません。 

 

民営化というマジックワード

民営化こそが正義という旗印の下に、様々な暴挙が行われようとしています。

例えば労基所の民営化は、本来彼らが持つ最大の武器である強制捜査権の意味を失わせますし、

公教育の民営化は、学力という画一的な評価軸で学校間の競争を過熱させ、

美術や体育といった授業を減らすなど、教育の多様性を失わせます。

また、マイナンバーの管理すらLINEに委託しようという、

プライバシーの危機意識が低い日本人の隙をつくような動きもあります。

 

一人ひとりのこれからの在り方

これからは、与えられるサービスに文句を言う「消費者」ではなく、

経済に隷属せず、社会に責任をもって関わる「市民」であることが重要です。

イタリアでは、地域に根差した政治施策や、ネットを利用し市民と政治家の距離を縮め、

情報の透明性を求める民主的な政治運営がなされています。

水道の民営化によって痛い目を見たフランスは、水道の再公営化にあたって運営の民主化を促しましたが、

この動きは他の公共サービスにも水平展開されました。

 

感想

軽く読める新書のはずが、重い内容でずしっと来ました。

 

日本の現在・未来の切り売りが問題提起されているのですが、

一番の問題は、肝心の我々市民がほとんど認識していないことです。

これは、下らない議論や芸能人の情事などで国民の意識を背けさせ、

その裏で重要な法案をさくっと通してしまおうとするマスメディアとの共謀が見え隠れします。

(外人から、まさにそう言われました。外からはそう映るみたいです)

昨年、モリカケ問題や相撲界のゴタゴタで北朝鮮問題なんかが放置されたのは記憶に新しいと思います。

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テレビ朝日『報道ステーション』

報道ステーションの番組構成にも色々と突っ込むところはあるのですが、

そこは本論でないので省略します。

 

さて、本書は私の購入時点で11万部突破とされていましたが、

「ぶっちゃけそんなに話題になってなくない?」という印象を受けます。

意図的に取り上げていなのか、既得権益者が沈黙を保っているのか…。

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冨樫義博『HUNTER×HUNTER』

 

メディアの最大の罪は、非難することではなく、黙殺することでしょう。

市民一人ひとりが全ての事象を掬い上げ、検証するのは無理です。

それを問題提起するのが、学者やメディアの仕事ですが、少なからず懐柔されてしまい、黙殺されます。

ただ、既存の「取り上げない」メディアが段々と力を失ってきているのは、ある意味転換点と思います。

ネットニュースやTwitterなど、情報に気軽にアクセスできるようになりました。

これからは逆に過剰な情報の波をいかに泳ぐかが、問われていくかもしれません。

 

メディア批判ばかりになってしまいましたが、政府の外交手腕に問題があることは言うまでもありません。

外交カードの使い方がイマイチで、諸外国やウォール街にいいようにやられてしまっています。

相手の要求を突っぱねず、主張の中間の着地点を何とか探そうとしてしまうのが

日本人のパーソナリティなのかもしれませんね。

譲るべきでないところも譲ってしまう…その結果がこうした事態なのかもしれません。

 

ちなみに本書は、昨日の本と比べて情報ソースが明らかとされていますが、

寄ってるっちゃ寄ってる印象はあるので、これも批判的な姿勢が必要です。

 

本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

ではではまた明日~。