Tommyの乱読のススメ

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【金融哲学という新しい分野】ハーバードのファイナンスの授業/ミヒル・A・デサイ

こんばんは~。

 

今年は年甲斐もなく大学の学園祭巡りをしております。

多分この3連休でシーズンも終わりかなぁと思います。

いずれ、簡単にレビューする予定です。

 

さて、本日はこの本。

そういえばファイナンスの本ってやってないなぁと思ったので、触れてみました。

 

明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業 ハーバード・ビジネス・スクール伝説の最終講義

明日を生きるための教養が身につく ハーバードのファイナンスの授業 ハーバード・ビジネス・スクール伝説の最終講義

 

 

 

まとめると…

  • ファイナンスは不確実な世界を乗り切る処世術
  • リスクはファイナンス手法で管理できるが、最終判断には避けて通れない
  • ファイナンスは実力・俗人的評価がされがちで、それが欲望の連鎖を生んでいる

 

 

ファイナンスは不確実への対抗手段

不確実性に満ちた混沌とした世界を泳ぐ術を提供するのが、ファイナンスの使命です。

古代・中世では、偶然は人知を超えるものという思想でしたが、

ルネサンス時代に貿易により合理主義とリスクテイクへの欲求が広まり、

偶然は分析の対象となりました。

やがて、偶然は個別には予測不可能だが、総和(期待値)は予測可能なものと導かれ、

この考えが、現代の保険とファイナンスの土台となっています。

 

ファイナンスのリスク管理手法

ファイナンスには2つのリスク管理手法(オプション・分散化)があります。

リスク管理とは、大きな賭けに出るためのツール・戦略であり、目的ではありません。

 

オプションとは、取引を行う権利をもって、行使する義務を持たない状態をいいます。

コミットが最小限な分、コストは最小限であり、投機リターンが見込めますが、

手持ち選択肢を手放すのが惜しく、決断に進めない優柔不断さが最終的に自分を追い込みます。

 

分散化は、資産形成において、

相互に特性の似ていない「不完全相関資産」によってポートフォリオを組むことが、

個別資産の長短所をカバーしあう(リスクヘッジ)ことです。

この理論は、金融だけでなく、人生における人付き合いにも同じことが言えます。

(見返りが大きいが損得勘定で動く人・辛い時も一緒にいてくれる人などの分散化)

 

レバレッジは後押しする力

レバレッジは、本質的には「お金を借りること」ですが、その意義は、

借金をテコに手元の資産では届かないチャンスを手に入れることにあります。

これにより義務を負うことになりますので、いかに折り合いをつけていくかという

バランス感覚が重要になりますが、そのプレッシャーが逆に高みに進むことを後押しし、

手に入れられなかったものを手に入れるチャンスをくれます。

一歩踏み出す勇気を!

 

ファイナンスはなぜ嫌われるのか?

ファイナンスとは、リスクとその偏在性の物語で、保険とリスク管理はリスクへの処方箋ですが、

それならなぜファイナンスは悪者扱いされるのでしょうか?

ファイナンスは不確実性を内含するため「運」の一面もあるに関わらず、結果は実力主義的に捉えられます。

よって、人は、この行為により生み出される利益は、自分の実力によるものと妄信してしまう傾向にあり、

その自尊心はさらなる掛け金のゲームのテーブルに就かせたがります。

そして欲望は雪だるま式に増えていく。この中毒性のあるサイクルが悪評の背景にあります。

 

そうした欲望にとらわれないために、

ファイナンスと人文科学(文学・哲学)の間に横たわる断絶に寄り添い、

それを埋めることが今後求められる姿勢と説き、本書は締められています。

 

感想

これはかなりいい本です。今年読んだ本の中で3本の指に入ります。

正直、レビューでは魅力が語れていないので、ぜひ読んでいただきたいです。

本書の画期的な点は、ファイナンスというものを技術でなく、根本から見直していることです。

 

例えば、レビューではカットしましたが、株主と経営者の利害不一致がもつれあう

「プリンシパルーエージェント問題」は現代資本主義の根本問題とされています。

(株主は短期利益を優先したいのに対し、経営者は成長路線の長期利益を優先したい等)

この問題の複雑性を述べるにあたって、筆者はE・M・フォースターの『眺めのいい部屋』を引き合いに出します。

上記の問題と本文学作品の間には、

社会の期待に応えるのか(株主の期待に応えるのか?)、はたまた自分に正直に生きるのか?

という同じ問題が横たわっていると指摘します。

この本読みたいんですよねぇ…。 

眺めのいい部屋 (ちくま文庫)

眺めのいい部屋 (ちくま文庫)

 

 

脱線しましたが、本書は金融の理論を文学・哲学の視点から分析しています(上は一例です)。

つまり、本書は金融哲学書です(そんな言葉があるのか知らないけど)。

挙句の果てに、ファイナンスに囲まれた人生をどうおくるべきかについて、

こんな哲学的なメッセージまで出しています。

人生はそれほど秩序のあるものではない。ぐちゃぐちゃで、複雑で、義務が衝突して当たり前なのだ。そんな相反する義務を乗り切っていくことが、善い人生を送るということにほかならない(p274)

薄っぺらいビジネス書の「ああしろ、こうしろ」とは違う深遠さを感じます。

(明快な結論が欲しいひとには向かないかも…)

 

本レビューでは飛ばした部分もありますので、興味を持たれた方はぜひ手に取ってみてください。

(リスクテイクに当たって避けられない「失敗・倒産」、ファイナンスにおける価値判断の理論等)

 

ただ、翻訳で「ファイナンス」と「金融」を使い分けているようだったが、

その基準がよくわかりませんでした。読みが浅いかな…?

 

関連して期待値計算について、以下の日記で遊んでいます。

もしよろしければ覗いていってください。

tommy-june.hatenadiary.com

 

本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

ではではまた明日~。