Tommyの乱読のススメ

ノンジャンル読書と雑記の混沌としたブログです。

【論理の限界】世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?/山口周

こんばんは~。

 

記事が消えたのですが、気を取り直して参りましょう。

 

今日はこの本です。

昨今、「世界のエリートは~」系の本が跋扈していますが、手に取りやすかった本書をチョイス。

アートとビジネスの関係については、以前触れていますが、

前回は「方法論」に対し、本書は価値観の解説に寄っています。

 

 前回の本

 

まとめると…

  • ビジネスを論理で組み立てることは限界で、今後はアートな感性が必要になる
  • 美意識を鍛えることは、クリエイティビティと自己規範の定着につながる
  • 物事を批判的に捉え、内省的に試行錯誤することが美意識を育てる

 

 

論理の限界

今日、従来の「分析」・「論理」・「理性」に軸足を置いた経営は限界に来ています。

その理由は以下のとおりです。

  • 論理に導かれる結論は、画一的で差別化につながらない(正解のコモディティ化)
  • 論理では、現代の複雑・不安定・不確実性を説明できない(方法論としての限界)

経営における意思決定は、「アート(感性)」、「サイエンス(分析)」、「クラフト(経験)」によってなされるべきですが、

結論に至った理由を論理的に説明できない「アート」は他の二つに比べて劣後して評価されます。

ただし、「何をしたいのか?」、「どう世界を変えたいのか?」というビジョンを描くには、

論理的には優等生的な回答は導けるかもしれませんが、熱や魅力に欠いたものになりえます。

人を巻き込むには共感やワクワク感を帯びている必要があり、そのためには、

全体を直観的に捉える感性と「真・善・美」を創り出すクリエイティビティが必要になります。

 

現代の消費社会

現代の世界の消費は、モノ自体でなく、承認欲求や自己実現欲求を満たすことに向けられています。

(消費活動は「自己表現のための記号の発信」byボードリヤール)

デザインとテクノロジーに依拠したイノベーションは、すぐに模倣され、パクリ消耗戦を引き起こします。

今の時代に継続して「売れる」ためには、

ブランドに付随するストーリーや世界観を構築する必要があります。

 

何に依拠するべきか?

流動性の激しい現代では法律の整備が追い付いていない事態が続いています。

明文化された法律だけに準拠した実法定主義では、

「書いていないことならやっていい」と倫理にもとる行動につながる可能性があります。

自然法主義的に内在的に「真・善・美」を判断するための美意識が求められることになります。

 

美意識を鍛えるということ

美意識を鍛えることは、①クリエイティビティ、②「邪悪」にならないための自己規範

を身につけることに繋がります。

鍛える具体的な方法は、絵画・哲学・文学に親しむこと。

その中で、物事を批判的に捉え、内省的に試行錯誤することが美意識を育てます。

 

感想

(も一回書いたら、100文字以上コンパクトになりました)

正直、売れた本って全然信頼していないんですが、本書は面白かったです。

私が人文寄りの人間なのでそう感じたのかもしれませんが…。

 

特にボードリヤールを引用したのは良かったですね。

70年代に今の消費市場を看破していた知の巨人ですが、

イマイチ知名度がなく「なんで誰も触れないんだろ?」と思っていたので…。

消費社会の神話と構造 普及版

消費社会の神話と構造 普及版

  • 作者: ジャンボードリヤール,Jean Baudrillard,今村仁司,塚原史
  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 1995/02
  • メディア: 単行本
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 (相当読みづらいからだろうなぁ…面白い本なんだけど…)

この人は、別に『象徴交換と死』とか『完全犯罪』とか書いています。私の好きな厨二っぽいタイトルでしょ?

 

印象に残ったのは、「責任」に関するところ。

アカウンタビリティは「なぜそのようにしたのか?」を説明すること(説明責任)ですが、

逆に言えば、それさえ説明できてしまえば言い訳ができてしまう(文字どおり説明するだけの責任)。

まぁだから企業も攻めの一手が打てないということでしょうね。

だから、ブレークスルーのためにアートを学べという主張は大変理解できるのですが、

自分一人だけがアート感覚を身につけても、

官僚的な日本企業だと異端児扱いされ追いやられて終わりになっちゃいますよね。

だから、

「今は批判的な思考はやめず牙を研いでおけ。権力をとったら反逆を試みよ…」

ってことかな?

でも、そこまで臥薪嘗胆できるのかな…?

まずは経営陣に学んでほしい…。

 

はてさて、誤解を招きそうなところもありましたので、一応補足しておきます。

 

アートだけを追求すればいいわけではない

あくまで「サイエンス」、「クラフト」とのバランスが重要と書いています。

(ただ、お互いを戦わせるとアートが負けるので、アートに優先度を置くのが良い)

論理で全てを説明できるわけではないけど、完全に非論理的っていうのはダメ。

 

レトリック(修辞)やメタファー(比喩)は人を動かす

超論理的に人に訴えるという観点で基本的に賛同ですが、使い方は要注意です。

というのも、発信する側が言葉遊びに終始して肝心なことを二の次にしたり、

受け取る側が多様な解釈をして混乱を招いてしまったりします。

(私はどちらのケースにも直面したことがあります)

 

ビジネスとアートの融合の可能性、今後も追ってみたいと思います。

 

本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

ではではまた明日~。

(間に合った!…ただ、もう書きたくない…)