こんばんは~。
今日から12月。
以下の記事をアップしたとたんにバズりましたが、
まぁ日々の読書レビューがないとこの記事は成り立たないわけで、
引き続き、平時平常運転で参ります。
さて、今日はこの本。
ブラックライダーと繋がってるなんて読み終わって初めて知りました。
あらすじで教えてくださいよ…そっち読んでないよ…。
ともかく、ブラックライダー未読者が書きますので、その辺割り引いてご覧ください。
(ジャンルをSFにするか悩みどころですが、超技術出てくるしそうしてしまいました)
まとめると…
- 世界の終末とブラックヒーローを描く未来世紀の神話
- 神話は後世の人間が都合よく作り上げたもの
- 人は拠り所にすべきものを見つけ従ってしまう。説明がつけばよい
あらすじ
小惑星衝突後の世界。恐怖や暴力が蔓延し、他人を信じることも難しい。罪だけ増え続けていた。そこに彼は降り立つ。価値観を破壊し、悩める者を救済する。数々の奇跡、圧倒的な力。誰もが知りたがった。後世、神とよばれた男の人生は、どんなものだったのか――。『流』から一年。進化し続ける著者が放つ、世界レベルの最新長編。
(新潮社HPより)
退廃する世界を描く
文明が崩壊した世界を描くという点では、
コーマック・マッカーシーのザ・ロード (ハヤカワepi文庫)を思い浮かべます。
舞台がアメリカという点、食糧を得るための手段が略奪や人食であるという点が共通しています。
ただし、一部の地域では白聖書派という社会秩序が形成されていること、
また、オーバーテクノロジーが惑星衝突後も生きていることが異なります。
よって、終末観としてはあちらの方が絶望的です。
(本作では食糧問題も解決されそうな雰囲気だし)
神話は人間が作る
この作品では多くの人間は二つの盲目的な立場をとります。
一つは、ナサニエル・ヘイレンを神格化することで、自分の食肉という行為を正当化する者。
もう一つは、白聖書派の命令に妄信的に従うことをよりどころにし、自分の居場所を見出す者。
(こちらはかつてのカイル・ゴッドフリー(最終的にナサニエル派に寝返る)や白聖書派の命でナサニエルを狙うビル・ギャレットが該当します)
どちらも求めているものは「救済」。
前者は極限状態ならばともかく、通常の道徳的には受け入れがたい行為であることは事実。
そのため、それを正当化する物語が必要で、依り代となったのが黒騎士ことナサニエルでした。
凄惨な子ども時代を生きているとはいえ、、神格化する材料が多いとは言えないナサニエルですが、
ここでは、正当化が目的となっている以上、材料は何でもいい。
「説明さえつけばいい」
そんな言葉を投げかけられているようで、現実世界でも同じ言葉をかけられた私は薄ら寒い思いをしました。
権威に従う
本作ではスタンリー・ミルグラムの服従実験※やアドルフ・アイヒマン※を例示し、
権威(物語・神話)に服従してしまう人間心理を説いています。
※被験者が、権威者の命令に従って相手(サクラですが)に電流を食らわせる実験。
被験者は相手がどんなに苦しそうにしていても、権威者の命令に従い電流ボタンを留めることはなかった。
※ナチスでユダヤ人大虐殺を立案した人物。
戦後裁判では自分は「上からの指示に従っただけ」だと飄々と主張。
裁判前に世論が想像した大悪人からかけ離れた子凡人という印象を与えた。
(関連記事置いておきます)
物語中では、人食をしたことについて、罪の意識を感じる人々に対し、
殺人鬼のダニー・レヴンワースが語った言葉がそれを暗喩しているので、引用をば。
いいことえお教えてあげましょうか。良心の呵責を軽くしたいなら分業にすることよ。(人食にあたっては)殺す者、解体する者、調理する者を分けなさい。…(中略)
(p282 ()内挿入はTommy)
要は「命令している人間」と「実行している人間」が違っていると、
その罪が重いのは相手側だ…と責任の逃げ道を用意することができるということ。
ナタニエルは、実行を正当化する救世主として、行動原理に位置づけられることになります。
感想
ブラックライダーを読んでいないのですが、本作は独立した本としても十分読めました。
聖書とかキチンと読んでれば拾えるシーンもあるんだろうなぁと思いましたが、
浅学な私ではあまり深く読めた気はしません。
この辺は継続して勉強だなぁ。
読み物としては、「冗長かな…」という印象でした。
ナサニエルの幼少期以前の分量がかなり多く、
世界崩壊の記述に入っていないのに、全体の分量の半分まできたときは、
「あと半分でまとまるのか?」と不安になりましたが、やはり後半はバタバタ気味。
まぁナサニエルが「神格化されるほど神がかった人間じゃない」ということを表現するために、
逆に描写は少なくしたのは分かるのですが、それなら前半ももっと抑えられたんじゃないかなぁ。
前半は正直退屈なので、そこで読むのをやめちゃう読者も多そうな気がしました。
小説は多様な解釈ができるので、読後感は人それぞれ。
それだけにレビューは難しいのですが、こうやって感性を広げていくのが重要な気がします。
先月はビジネス書が多かったので、こういったジャンルも掘り下げていこうと思います。
「平成の終わり」に、「SEKAI NO OWARI」を聞きながら、
一歩間違えたら「一巻の終わり」なスリリング小説「罪の終わり」をじっくり読みましょう!
相変わらず締め方が壊滅的にへたくそですが、
本日はここまでです。
お読みいただきありがとうございました。
ではまた明日~。