遅ればせながら本庶佑さん、ノーベル賞おめでとうございます。
天候不良が続く今日この頃ですが、晴れやかな話題でいいことですね。
さて、凡人の私はマイペースに読書記録を続けます。
本日は趣向を変えて美術史を。
西洋美術は結構好きなのですが、体系だって勉強していなかったので、通史を知るために本書を手に取りました。
本書でも美術史を学ぶ意義について、美術には宗教・政治・思想・経済が表れており、歴史や価値観を学べる有用な題材と位置づけています。
では、通史について進めます。
神中心の世界観
アルカイック
ギリシャ美術で一時代で、クラシックの基礎を築く。不動的な表現。
クラシック
ギリシャ美術の一時代で、男性の肉体の優美を描く。劇的で表現的。
ペロポネソス戦争や恐怖政治の反動で、美術は享楽的な志向へ。
ヘレニズム
ギリシャ美術の一時代で、個性を重視した写実主義(対象が神から人へ)。
感覚に訴える官能的な表現に。
アレクサンドロス3世の大遠征の影響でギリシャ文化が広域に広がりました。美術品が商品化されてコピーが作られるようになったのもこの時代。
ローマ美術(以下ゴシックまでローマの美術史)
ローマ帝国の支配による独自の美術の萌芽。
写実性の強い肖像彫刻とスケールの大きい大規模公共建築(コロッセオ、テルマエなど)
宗教美術、ロマネスク
ローマ帝国衰退後の象徴的キリスト教美術。感覚に訴える大袈裟な表現。
読み書きができない人に向けた聖書としての宗教美術。地方向け。
ロマネスクは教会のための建築様式で、荘厳さを表現するため石造りであり、壁が厚く、窓が大きくない構造。
ゴシック
都市圏の政治支配と取り込みを目的にしてフランス王家が仕掛けた様式。
建築様式として、高さを競い、壁が薄く、大きなステンドグラスを嵌め込めることがロマネスク様式との大きな違い(後期は装飾の派手さが特色)。光を取り入れられる構造のため、より神秘性を表しています。
なお、絵画は細密・装飾的な写実主義。神の世界から人間の世界に関心が向けられつつあります。
ヨーロッパ都市経済
ルネサンス
キリスト教により否定されていたギリシャ・ローマ学問・美術の再興。人間の地位向上と尊重がテーマ。
この時代から芸術家が文化人・貴族的な地位に向上しました。
ルターの宗教革命によりローマ教会の地位が脅かされ衰退。
北方ルネサンス
ブルゴーニュ公国ネザーランドで興隆。
都市経済発展の生活水準向上から、民衆の間に自意識が目覚め、肖像画が登場。
現実を重視したシンボリズム、写実主義。
ヴェネツィア派
武力でなく貿易で発展しようとしたヴェネツィアで誕生。
表現の自由が担保されていたため、感覚に訴える色彩で世俗的、享楽的。
バロック
免罪符をめぐる宗教改革により聖書を最大の権威とするプロテスタントが誕生。そのため、教会がカトリック信者獲得のために美術の力でそれを実現しようとしたもの。
感情や信仰心に訴える。
オランダ絵画
プロテスタント文化圏のアムステルダムで発展。
市民階級主導であり、絵画が商品に。シンボリズムによる表現が盛り込まれており格式の高い歴史画以外を中心とした作品群。
フランスが美術大国になるまで
フランス古典主義
画家の夜襲化による質の低下と地位の低下を問題として、アカデミーが成立し、画家のエリート化が推進。
知性と理性に訴えかける秩序だった作風。
ロココ
ルイ14世の厳格な時代の反動を受けて、貴族的・女性的な感覚に訴える作風。
フランス革命により衰退。
新古典主義、ロマン主義
フランス革命後、色調を抑えた堅固な構図など古典主義への回帰意図した新古典主義が興隆。ナポレオンがローマ帝国を意識していたという時代の潮流もそれを後押し。
ナポレオン失脚後は色彩や感性を押し出したロマン主義と対決姿勢を強めていきます。
近代社会
レアリスム
ナポレオン3世による都市化の押し進めにより、ブルジョア階級と労働者階級の二極化が進行。
こうした社会問題意識から、理想でなく現実を見る写実主義が支持を集めることになります。
イギリス美術
イギリスは宗教改革による美術品破壊や、そもそも文化後進国であったことなどから文化が育たなかったが、王侯貴族かの要請により、シンボリズムによる神格化やエレガンスさを醸し出した肖像画が広まりました。
また、産業革命を背景に、都市から離れた風景画への羨望が強まり、格調高く演出されました。
バルビゾン派
近代化によって民衆が現実的な田園風景へ、郷愁や安らぎを求めるようになり登場。
ただ、当時のアカデミーからは受け入れられず。
印象派
視覚が捉えた瞬時性を記録し、主観的に描く。
美術に先入観がなく、プロテスタント気質で宗教色の強くない絵画を好むアメリカで受け入れられます。
現代アート
南北戦争後、経済が発展したものの、歴史が浅く文化的なコンプレックスを感じていたアメリカは、美術品を収集することで文化の素地を固めていきました。
そして自国の民主化の地盤の中で、独自の美術文化を確立していきました。
私はロマン主義のドラクロワが好きで、実際の絵画も何枚かみました。
大きなキャンバスで筆力が桁違いで圧倒されました。
ただ、当時、実際の事件を絵画で描くことは俗だとしてタブー視されていたとのことです。そうした力のある絵なのに、当時は保守的な気質で、センセーショナルなものは受け入れられなかったんですね。生きてくる時代を間違えたのか…。そうした意味でバルビゾン派なんかも不遇ですね。ホント、タイムリーに成功するかは時の運なんですね。
さて、美術史の変遷を追うだけになってしまいましたが、そこから読み取れるには、時代の潮目には美術も変わるということですね。
中々定義し難い文化の中で生きている現代人ですが、平成から次の時代への過渡期に何か文化に変革は起きるのでしょうか?
という問題意識を持ち、本日は締めで。