Tommyの乱読のススメ

ノンジャンル読書と雑記の混沌としたブログです。

【Output÷Input】生産性とは何か/宮川努

こんばんは~。

 

今日も大学の学園祭に行ってきました。

(酒が飲めたのでベロンベロンになりました…アップが遅くなったのは多分それが原因)

明日はラスボスの東京大学に行こうかと思っていましたが、ちょっと野暮用が入ったためキャンセル。

よって、これで打ち止めです。

結局8つ行きました。適当なときにレビューします。

広大なスぺースのある大学もあり、子どもは大喜びでした。

いつもの散歩とは違った刺激を与えられてよかったかなと思います。

 

さて、本日はこの本。

生産性って気軽に使う言葉ですが、

こういう言葉に落とし穴がある気がしたので、認識を確かめておこうと手に取りました。

 

生産性とは何か: 日本経済の活力を問いなおす (ちくま新書)

生産性とは何か: 日本経済の活力を問いなおす (ちくま新書)

 

 

 

まとめると…

  • 生産性とはアウトプットをインプットで除したもの。ただし両者の意味は広義
  • 日本の生産性向上は、閉鎖的な市場を競争的でオープンにすることで実現
  • アベノミクス施策の生産性への貢献は、ガイドラインが描けるかによる

 

 

生産性とは

生産性とは経済的な活力と工夫の指標で、すべての要素を鑑みた指数は以下であらわされます。

 

全要素生産性(TFP)=生産量(or付加価値量)/投入要素の集計量(p38)

 

この計算には、資本や中間投入(変動費要素)、労働資本に限らず、

知識、ノウハウや創意工夫なども算入要素になり、近年は重要度が増しています。

研究開発によるソフトウェア、知的財産だけでなく文化資産もこうした無形資産として

有形投資、技術・革新的投資と結びつくことでも生産性の向上に寄与します。

 

なお、産業構造革命は必ずしも生産性向上をもたらすわけではなく、

その効果は産業の特性と経済規制の在り方に左右されます。

 

日本における生産性

日本においては、硬直的な市場構造(企業の新陳代謝の少なさや起業の少なさや)が、

生産性の向上要因を既存企業内部からに限定しています。

「日本は十分先進国だし無理して生産性を向上させなくてもいいのでは?」という疑問に対しては、

今は生産性が向上していたとしても、将来のブレークスルーは見込めず、

ジリ貧になっていくことが予想されるため、抜本的な生産性向上が必要という回答になります。

これは、日本は世界金融後に経済立て直しを優先し、

目に見えにくい無形資産投資(特に人材投資)の優先度を下げたツケ払いです。

これを解決するには、政府の介入はできる限り避けて市場機能に任せ、

生産性の高い企業の参入を高め、低収益構造の企業の退出を妨げない構造が必須です。

生産性を高める要素は以下の3点です。

  1. 競争性:市場経済メカニズムにより消極的姿勢かた積極的姿勢へのシフトへ
  2. 合理性:非合理的なシステムの見直しによる可能性の拡大
  3. 多様性:多角的視点の確保によるイノベーションの誘発

 

アベノミクスの生産性への効果は?

昨今の生産性への注目の背景は、従来のアベノミクスの金融政策は短絡的な効果を期待するものでしたが、

経済成長への反応は鈍く行き詰まりが深刻化したことから抜本的な改革が必要になったことによります。

具体的な施策として、労働市場改革が注目を集めていますが、

残業規制や同一労働同一賃金の原則がいかに生産性向上に結び付くかのガイドラインがなければ、

労働市場の流動化(硬直体質の打破)を促すことなく終了という結末を迎えかねません。

 

感想

生産性ってどうしても「効率性」と一緒くたに語られることが多いような気がしており、

本書にはその辺の明快な説明を期待していました。

 

全要素生産性(TFP)=生産量(or付加価値量)/投入要素の集計量

 

一応、 上の表ではその答えにはなっているのですが…私の考えをば。

 

効率化とは、分母を小さくすること(例:人件費削減、短時間化)に繋がりますが、

それは、あくまでTFPの向上の手法の一つにすぎません。

(分子を増やす=生産・付加価値量をあげること手段もあり)

ということで、効率性は生産性の全てでなく、いち要素にすぎないと言えます。

 

何が言いたいかというと、AI化(効率化)は人の仕事を奪うという論調が強いですが、

AI化ができるのは、あくまで分母を小さくすることであり、

この計算式は「人が生き残るために、分子を増やす方に集中しよう」という結論を明確にします。

そのためには創造性を育むことが必要などの議論が進みやすいと思います。 

どうしてもAI化を悲観論に持っていき、それでおしまいにする方々が多いのですが、 

「悲観する前に何ができるかを考えよう」と後押しする論調があまりにも少ないと思います。

それは今後の時代を作る若者たちの不安を煽るだけで、

それこそ何の生産性も生んでいません(むしろマイナス効果)。

 

さて、本書は、新書という形態に合っていなかったという印象でした。

データ準拠なのはありがたい(新書とは思えない参考文献数!)のですが、

特段新しさのない見解にも丁寧にデータで答えるスタイルで、

見解の提示とデータの提示が一定トーンで進むため、読む方は結構しんどいです。

前者を全面に出し、データの提示を補足的に使うなど濃淡があった方が印象に残ると思います。

そのため、主張内容がかなり薄まったものになっているなぁという印象でした。

できればハードカバーなどでじっくり読みたいですね。

 

いい分量なので、本日はボケはなしで締めます。

 

本日はここまでです。

お読みいただきありがとうございました。

ではまた明日~。