需要予測というのはあまり馴染みのない言葉ですが、ものの考え方としては知っておいて損はないかなと考え、新書である手頃さも相まって手に取りました。
今日もランニングをしてヘロヘロですが、さらっと読み切ることが出来ました。
需要予測とは?
品切れ、過剰在庫を防ぐことを目的に行われる、「どれだけ売れるのか?」を推測すること。ただし、人間の判断は限定合理性によって行われるため、予測ミスが発生します。本書では、認知科学的アプローチで、このミスが発生する仕組みを読み解き減らす手法を述べることを目的としています。
需要予測ミスを引き起こす要因
ヒューリスティクス
ヒューリスティクスとは、限られた資源の中で「ある程度の精度で最速の思考方法」を指し、時間や人が限られるビジネスシーンでは有用な手法ですが、ときにはミスも起こります。それは、以下のとおりで、いずれも偏った視点によって引き起こされます。
利用可能性ヒューリスティクス:思いつきやすいことのみを予測に織り込んでしまう。
代表制ヒューリスティクス:一部の特性を一般化してしまう。
思考のクセ
予測するのも人間、バイアスがかかった状態で予測をしてしまうことがありえます。
正常性バイアス:異常事態を受け入れにくい
確証バイアス:自分に都合に悪い事象を見ない
現実性バイアス:将来のことよりも現在に重きを置いて評価する
出版バイアス:効果がなかったことを軽視する
後知恵バイアス:最初から分かっていたことと結果論的に捉え、きちんと反省しない。
人的予測バイアス:需要の実勢値よりも予測値を大きく捉える。これは、予測を大きく見て過剰在庫を抱えることよりも、品切れにより機会損失を引き起こすことの方を恐れてしまうことにより引き起こされます。
よりよい需給予測のために
完璧な需給予測モデルを構築することは難しく、突発のものなど読めない需要もあることをよく理解すること。そうしたときには、早く変動を察知し、リカバリーを取ることが肝要。
人間が行う需要予測には抜けや先入観が入りうるのでそれを防ぐためにはモデルやシステムを構築し、見える化することが効果的。
需給予測は職人芸になりがち。標準化と見える化をして、万人が振り返れるようにしておくことが組織力を上げる要。
自分は大学時代に社会調査の科目などもかじっていたのですが、考え方はそれに近いかなぁと思いました。そのため、目新しい議論は少なかったというのが本音。
本書は筆者の経験談がふんだんに含まれており、化粧品に明るい人にはイメージが湧きやすい内容と思います(私は全然ダメでした...)。
需要予測の考え方が中心で、実務的な話はあまりないために、本書を読んでも需要予測はできるようにはなりません(タイトルには実践と銘打たれておりますが...)。著者の他の本はもう少し専門チックなようですので、興味のある方はそちらに進むのが吉かと。
そういう意味で、本書は入門書としての位置付けで手に取るとよいかと思います。